ゲーテ「ファウスト」を巡るクラシック音楽作品
ヨーロッパのクラシック音楽作品を見ていると、「ファウスト」を題材にした作品が少なくないように思う。ゲーテのテキストを用いたり、「ファウスト博士」の伝説を使ったりの違いはあるが、ヨーロッパ人にとって「ファウスト」の存在が決して捨て置けるようなものでないことは伝わってくる。西部劇がいつも、「トゥーム・ストーン」で「ワイアット・アープ」で「ドク・ホリデイ」をやっているように、日本が「忠臣蔵」だったり「幕末モノ」が繰り返し取り上げられているような雰囲気を連想する。
そもそもこの「ファウスト」とは、実在するゲオルク・ファウストという人物をモデルにしているらしい。神聖ローマ帝国時代に生きたドイツの占星術師・錬金術師で、1480年頃に生まれ、1540年に錬金術の実験中に爆死をしたという逸話を持つ。ゲーテがこれを題材に書き始めたのがいつなのかは分からないが、Wikipediaのゲーテの作品の項目では「一生をかけて完成した畢生の大作」と表現されている。二つの部分に別れており、第一部は1808年に出版され、第二部は1833年に出版されている。
さて、この「ファウスト」を題材にした作品としては、すぐ思いつくことが出来るだけでも、ベルリオーズの「ファウストの劫罰」、リストの「ファウスト交響曲」などがあるし、ファウストが自分の魂と引き換えに召喚した「メフィストフェレス」を主題にした作品としてもボーイトの歌劇がある。そして、外せないのがマーラーの「交響曲第8番“千人の交響曲”」の第2部だろう。他にも色々あるのではないかと調べ始めてみたが、「ファウスト」伝説もしくはゲーテの著作を題材にした作品を見つけるのは至難の業だった・・・。まだまだあるような気はするので、見つかれば追記していきたい。
西暦 | ゲーテの活動 | 音楽作品、作曲家の活動など |
---|---|---|
1808 | 「ファウスト」第一部。 | |
1809 | 小説「親和力」を発表。 | ベートーヴェン:メフィストの蚤の歌 作品75-3 |
1811 | 「詩と真実」を刊行。 | |
1812 | ベートーヴェンと対面。 | |
1814 | シューベルト:糸を紡ぐグレートヒェン シューベルト:ゲーテの「ファウスト」の一場面 |
|
1816 | シューベルト:歌曲「トゥーレの王」 シュポア:歌劇「ファウスト」 |
|
1817 | 「イタリア紀行」を刊行。 | |
1819 | 「西東詩集」を刊行。 | |
1821 | 「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」を刊行。 | |
1824 | ベルリオーズが「ファウスト」のフランス語訳を購入。 | |
1827 | 情熱の三部作 | |
1829 | ベルリオーズと対面。 | ベルリオーズ:「ファウスト」からの8つの情景」 |
1830 | ベルリオーズがリストに「ファウスト」を読むように薦める。 | |
1831 | 「ファウスト」第二部。 | |
1832 | 死去。 | |
1844 | ワーグナー:ファウスト序曲 | |
1846 | ベルリオーズ:劇的物語「ファウストの劫罰」(リストに献呈) | |
1851 | J.シュトラウスII:ワルツ「メフィストの地獄の叫び | |
1853 | シューマン:「ファウスト」からの情景 | |
1854 | リスト:ファウスト交響曲 | |
1857 | リストが「ファウスト交響曲」に「神秘の合唱」を書き加える。 | |
1859 | グノー:歌劇「ファウスト」 | |
1868 | ボーイト:歌劇「メフィストーフェレ」 | |
1880 | リストが「ファウスト交響曲」の最終稿を書き上げる。 ムソルグスキー:蚤の歌 |
|
1881 | リスト:第2メフィスト・ワルツ | |
1883 | リスト:第3メフィスト・ワルツ | |
1885 | リスト:第4メフィスト・ワルツ(未完) | |
1907 | ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第1番(第1楽章にファウスト、第2楽章にグレートヒェン、第3楽章にメフィストフェレス) | |
1910 | マーラー「交響曲第8番"千人の交響曲"」初演 | |
1913 | リリ・ブーランジェ:カンタータ「ファウストとエレーヌ」 | |
1916 | ブゾーニ:ファウスト博士(未完) |
こう並べてみたら、リストとその周囲だけ、という感じもしてきた・・・。マーラーはなぜこの「ファウスト」を交響曲に取り入れようとしたのだろう?
三省堂から出ている「クラシック音楽作品名辞典」とWEBで調べてみた。この作品名辞典、去年に新しい版が出ていたことを今知った。買いたい買いたい!