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梨木香歩「沼地のある森を抜けて」

沼地のある森を抜けて (新潮文庫)
梨木 香歩
新潮社
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今日、「沼地のある森を抜けて (新潮文庫)」読了。

最初は「ぬかどこ」を巡る小さな話が幾つか続く構成なのかと思っていたら、どんどんと大きな展開が現れて、どこへ連れて行かれるんだという切迫感に酔いながら一気に読み終えてしまった。油断していた。

今まで読んできた梨木香歩の作品は、一言一句動かすものかというような気迫があった。言葉を積み上げて、塗り固めていく。そして終盤にそれを一気に壊したり、積み上げたものを飛び越えさせたりするような作家だと思っていた。けれどこの作品の特に序盤には、今までの作品にあったような言葉を積み上げていくテンションは和らいでいて、物語の進行のスピード感のほうに重きを置いているような印象を受けた。そのスピードは緩むことなく、疾走し続ける。語り手が変わったりもするし、何かを象徴的に描きなおしている箇所が挟まれたりする。そして、終盤にいつもの梨木香歩らしいテンションが突如現れ、物語に急激なブレーキをかけていく。スローモーション。そこでの言葉の輝き方が、僕には素晴らしく感じられた。染み込んできた。あるものを擬人化したと思われる箇所の性別の配置がユニークだと思う。

そして最後の夜の場面、こういう衝き動かされているような気持ちや状態は、分かると思う。