長嶋有「ジャージの二人」「ジャージの三人」
小説というのは面白いなあと思う。色んな形があっていいんだなと。
「ジャージの二人」と「ジャージの三人」、この緩く締まった物語を読んで楽しんでいたら、前の前の前の職場で同じ課に居た同僚から「この歳*1になると小説なんて読んでる暇がない。君もそんな馬鹿げたものを読むのは早いうちにやめたほうがいい」なんてことを言われたのを思い出してしまって、あの時にその意見を「そんなもんですかね」的に受け流してしまった僕のところに今すぐ飛んで行って「もうちょっと本心をさらけ出したら?」と声をかけたい気分になった。僕も50代になれば何を思うかは分からないけど、あの陽気でちょっと押しつけがましい同僚が拒否した物に出会って、今、読み通して、ダイアリーを書いてみながら家に帰るところ。川を渡っている。
筋道のある物語が欲しい時もある。そういう時は、確実な解決が用意されるミステリーや、世界の隅々まで作者の目が届いたファンタジーを読む。答えの出ないわだかまりを抱えている時なんかには、そのテンションとシンクロできるような物語が欲しい。「ジャージの二人」と「ジャージの三人」を読んでみて、何でもかんでも、ほどほどでいいじゃないかと開き直ってしまった。いいのか悪いのか、分からない。それでも僕は幸せだ。
*1:50代くらいだったはず。