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「音楽の捧げもの」の二つの録音

以前、レオンハルトクイケン兄弟達のバッハ「音楽の捧げもの」を聴いて、有田正広盤は比較にならないみたいな話を書いたが、今日有田盤を聴き直して認識に変化があった。

弦楽器の技術や音色の深さでは、明らかに有田盤のほうが上回っている。太くクッキリとした音色。音から音への移り変わりの自然さ。悠然とした歩みなども、クイケンの音色からは聴けないものだ。レオンハルト盤は1974年録音、有田盤は1993年録音と、20年近く時代に差があるのだが、それまでに蓄積されてきたピリオド楽器奏法の鍛錬の過程を垣間見るような思いを持った。

そして、チェンバロの演奏も、レオンハルトはずっと表情的なのだ。ロマン的とでも言うか。和音を聴かせるためなのか、僅かながらに音をずらす効果や、手元のスコアにあるスラー*1の箇所では、少しテンポを溜める感じがする。それが、レオンハルトと有田盤のチェンバロとの違いのように思う。有田盤は、クールだ。粛々と音楽を進めていく。レオンハルトは歩み寄ってくるが、有田盤にはこちらから近寄らないといけない。そんな空気感の違い。

クイケン兄弟は90年代に入ってこの曲を録音し直しているらしい。調べてみれば1,500円程度で手に入るようだ。ぜひ聴いてみたい。

何にしても、この作品は凄いな。

*1:自筆譜にあるのかどうかは未確認。無さそう。