2つの100曲(「音大生なら聴いておきたい」と「初心者のための」)を中途半端に内容比較
懲りずにクラシック音楽の話題を書く。
このダイアリーで取り上げたクラシックに関連する「100曲」は以下の2つ。そこで、この2つを比較してみようと思い立った。
http://d.hatena.ne.jp/tragedy/20070728/p1
前者は「音大生なら聴いておきたい」と銘打ってあって、後者は「初心者のための」と銘打ってあるので、それぞれ聴いて欲しい対象は異なるはずだが、重なっている曲もあるということで、思い立った以上はやってみる。中途半端になること必至だが。結果は後で考える。両方のリストにある曲は以下の作品。抜けがあったらすいません。
- J.S.バッハ:ブランデンブルグ協奏曲
- J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲
- モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」
- ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」
- シューベルト:ピアノ五重奏曲「鱒」
- ベートーヴェン:交響曲第9番
- ベルリオーズ:幻想交響曲
- スメタナ:連作交響詩「わが祖国」より「モルダウ」
- サン=サーンス:組曲「動物の謝肉祭」
- フランク:ヴァイオリン・ソナタ
- マーラー:交響曲第1番
- リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェヘラザード」
- ブラームス:クラリネット五重奏曲
- チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」
- ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
- ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
- エルガー:行進曲「威風堂々」第1番
- ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
- ホルスト:組曲「惑星」
- ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー
- ラヴェル:ボレロ
- プーランク:六重奏曲
- オルフ:カルミナ・ブラーナ
こう並べてみると、どれもこれも大名曲だし、作品の持つ雰囲気に違いがあるので見ていて楽しい。聴きたくなってきた。
続けて、両方のリストの作曲世紀毎の内訳。以下のような感じ。
作曲世紀 | 音大生なら聴いておきたい | 初心者のための |
---|---|---|
13世紀 | 2 | 0 |
14世紀 | 1 | 0 |
15世紀 | 0 | 0 |
16世紀 | 3 | 0 |
17世紀 | 1 | 0 |
18世紀 | 16 | 8 |
19世紀 | 47 | 46 |
20世紀 | 30 | 46 |
「音大生なら聴いておきたい」のほうは、19世紀が一番多く20世紀がそれに次ぐ形だ。18世紀も少なくないのと、17世紀以前にも音楽史上重要な作品として数が割かれている。これに対して、「初心者のための」は、19世紀・20世紀が大部分を占めると同時に、17世紀以前からは全く選ばれていないことが分かる。つまり、より現代に近い作品が選ばれている。
続けては、便宜的に使われることの多い作品の形態を指すカテゴリを用意して、それぞれの内訳を整理してみた。
カテゴリ | 音大生なら聴いておきたい | 初心者のための |
---|---|---|
管弦楽曲 | 36 | 63 |
協奏曲 | 12 | 15 |
器楽曲 | 19 | 9 |
室内楽曲 | 7 | 8 |
歌劇 | 10 | 2 |
声楽曲 | 16 | 1 |
その他 | 0 | 2 |
「管弦楽」に多くの作品を充てているのはどちらも同じだが、「初心者のための」がかなり「管弦楽」に偏向していることが分かるだろう。また「歌劇」と「声楽曲」といった、声に関連する作品の数も「初心者のための」では少なく、「音大生なら聴いておきたい」のそれとは大きな違いが出ている。
「初心者」にとってみれば、派手な響きで耳に馴染みのあるもののほうが入っていきやすいと思うので、現代よりの管弦楽作品からセレクトするのは妥当な判断だろうと思う。その理由としては、オーケストラの響きに接する機会は、現代でも知らず知らずのうちに設けられているからだ。CM音楽やテレビ番組のジングル、映画音楽。特に映画音楽に関しては、脚光を浴びる映画の殆どがオーケストラを使用した音楽を採用していて、「ハリー・ポッター」や「ロード・オブ・ザ・リング」などの音楽を聴いた耳であれば、20世紀のオーケストラ作品の響きの質はかなり近く感じられると思う。先に述べた「作曲世紀毎」の傾向を考えてみても、現代でもよく聴かれるような響きがクラシック音楽の中に刻印されているのを感じ取れれば、一気にクラシック音楽を身近にすることが出来るかも知れない。そんな意図が「初心者のための」のリストには込められているのかも知れない。意図的なのか恣意的なのかは分からないが、「初心者のための」の100曲リストを作成した方からすると、そういう音楽との付き合い方をされたのかなと想像する。
だからどうなんだ。結論は、まだない。