川人博「過労自殺」
自分を取り巻く環境から考えて、他人事ではないと思いながら読み進めている。
「過労自殺」の特徴として5つが紹介されている。
- 幅広い範囲の労働者にひろがっており、業種・職種を問わずほとんどの分野の職場で発生。役員から中間管理職、一般職に至るまで会社内の地位に関わらず発生している。
- 自殺に至る原因として、長時間労働・休日労働・深夜労働・劣悪な職場環境などの過重な労働による肉体的負荷、および重い責任・過重なノルマ・達成困難な目標設定などによる精神的負荷が挙げられる。
- 自殺に至る過程において、自殺者の多くは、うつ病などの精神障害に陥っていたと推定される。
- ほとんどの企業は、職場で過労自殺が発生した場合に、その原因を労働条件や労務管理との関係でとらえようとせず、従業員の死を職場改善の教訓に生かさず、遺族に対しても冷淡である。
- 過労自殺は、その実態がなかなか組織の外部に伝わらない。
本の内容だが、具体的事例を緻密に紹介し、過労自殺の遺族への補償を巡る課題の提示、そして個々人がどういう態度で働けば「過労自殺」を防げるかの提言まで含む濃いものだ。1998年に出た本とのことだが全く古びてないと感じた。それは「過労自殺」の問題が全く改善されていないことの証左と言えないだろうか。