宮本文昭『オーボエとの「時間」』
今、人から借りて読了。
- 作者: 宮本文昭
- 出版社/メーカー: 時事通信出版局
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 8回
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宮本文昭さんのオーボエの音は、オーボエらしさが綿密に織り込まれているにも関わらず、オーボエという楽器の存在を忘れさせてくれる力がある。矛盾しているような表現だが、そう思うのだ。音の一つを取り出せば誰も到達できなかった美しいオーボエの音がそこに在るのに、その音が次の音を呼び込んだ時点でオーボエの存在は音楽の存在にすりかわる。取り替えの利かない個性だ。僕には、彼の音色やヴィブラートの特徴を掴もうと集中的に聴き続けた期間があった。「午後のロマネスク」、モーツァルトの協奏曲などのソロ作品を中心に買い集め聴き続ける毎日。毎日は言い過ぎかも。その立ち上がりからすぐ響きの成分を連れてくるような彼の音を、録音の際の調整の成果なのではないかと僕は勘繰っていた。けれど宮本さんが参加しているとは知らずに買ったサイトウ・キネン・オーケストラの録音を聴き直せば、オーケストラの中にあっても同じ吸引力を保持している彼に気付くことが出来た。彼がもうオーボエを吹くことがないのは残念だが、これまでの録音と、この本のようなまた別の魅力の可能性を楽しみ続けたいと思う。