夏川りみ「空の風景」
去年、偶然にも夏川りみの生歌に接したことがあり、安定感と情感とが並び立つその様に無防備に感動してしまったのだけど、そのことは今日の今日まですっかり忘れていた。そして友人に借りたこのアルバムを聴いて、去年のその瞬間を思い出したわけだ。このアルバムでは夏川りみは、ケチのつけようがない巧さでキャッチーな作品を歌う。固まった音程と声色。この安定感は彼女の生歌を聴いて感じたものと同じものだ。とは言え、感情の揺れまでコントロールしているかのような完璧さからは、どこか人工的な匂いが立ち上ってきて、僕の記憶にある情感とは重ならない。こういう巧い人だからこそ、ライヴが凄いのだろうな、と思う。生歌でしか起こらない揺らぎが僕を惑わせる。そんな情感が、一回一回を特別にする。また聴いてみたい。