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Brian Wilson「That Lucky Old Sun」

ラッキー・オールド・サン(DVD付)
ブライアン・ウィルソン
EMIミュージック・ジャパン (2008-09-17)
売り上げランキング: 135

ブライアン・ウィルソンの新しいアルバム「That Lucky Old Sun」に打ちのめされている。この人は復活を遂げたばかりか、創作のピークをまた迎えている。その新鮮さと荘厳さをどう表現したらいいのだろう? 彼をサポートするミュージシャンたちの質の高さに助けられていることも否定できないとは言え、彼の出来得る範囲でのリーダーシップが、このアルバムをここまで引き上げていることは疑いようはない。ブライアン・ウィルソンが生きて、その才能を花開かせるこの日を共有できていることを、僕は信じていいのだろうか?

ブライアンが創り、ビーチ・ボーイズが残してきた数多くの音楽が、各所でこだましている。優しい語りかけ、ハッとする先鋭的な部分、どこか懐かしさを感じさせる響き。それら全部が、堅牢な世界を形作って僕に迫ってくる。「Morning Beat」から始まり「Midnight's Another Day」まで続く流れは、ブライアンのこれまでを表現しているように思える。だって「Forever She'll Be My Surfer Girl」なんて曲が含まれているのだ! 「Lost my way」の言葉で始まる「Midnight's Another Day」は、階段を一段一段踏みしめて高みへと上がっていくような音楽で、まるで今のブライアンだなと思って聴いていたら、「Until I found」という詞が登場してグッと来た。かつて「Until I die」と歌ったブライアンはもう居ないんだ・・・。

そして最後に歌われる「Southern California」のこの詞。

I had this dream
Singing with my brothers
In harmony, supporting each other

英語のリスニングに難のある僕だけど、不思議なことにブライアンの真摯な歌声はきちんと聞き取れていた。「In harmony」の直後に被さってくる本当のハーモニーに、僕は涙してしまった。デニス・ウィルソンとカール・ウィルソンは、どうして兄・ブライアンを残して亡くならなければならなかったのだろう? そんなつらさを超えて、ブライアンは今を楽しみながらロックを生きているんだと思うと、涙を止められなかった。

誰かが書いていた。「ビートルズにはジョージ・マーティンが居たが、ビーチ・ボーイズにはブライアンしか居なかった」。ビートルズに対抗するために彼が独りで費やした時間。独りで背負わなければならなかった救いようもない挫折。それらがいま回収され、報われている。それを祝福する者の一人に、僕はなりたいと思う。