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夏目漱石「それから」

それから (新潮文庫)

それから (新潮文庫)

数年ぶりの再読。スムーズに読了。東京の地理に通じていたら更に面白いのだろうな。今僕は関西圏に居るので、例えば宮本輝の初期の作品や新選組関連の本などでは、どこからどこへ行ったというだけでかなり面白く読めるから。

読み終えて考えている。話があっちへ行きこっちへ行きと、代助の迷いそのままに読んでいる僕も揺れる。終盤の展開はなかなか重たい。代助が平岡と相対する場面の情景は痛々しく、本当にあったことのような。代助の仕草一つ一つがリアル。初読がいつか忘れたが、前に読んだのは求職中だった頃だ。食うためだけに働いた数年間の後。忙しさに埋没し、考えることを怠けた結果、社会に働きかける意味と目的とを見失うような局面が僕に訪れた。働き出した頃は食うためではなかったはずだった。僕の中で整理した哲学もあった。でもそれは自分の根幹にある哲学を美辞麗句でクルクル巻いて、実際は直視をしないでいただけだった。そんな自分の態度に気付き、僕は我慢できなかった。亡くなった阿部謹也の「教養とは何か」にある「自分が社会の中でどのような位置にあり、社会のために何ができるかを知っている状態」になろうとした僕は、立っていられなくなり倒れた。そんな頃の「それから」はただただ恐ろしい物語だった。

今回は、かつて読んだ時に得た電気が走るような共感は沸き上がってはこなかった。僕や僕の周りが変わったせいだろう。