芥川作曲賞選考会の演奏を聴く
今日のNHK-FMの「現代の音楽」で、先日の芥川作曲賞選考会の様子が放送されていた。芥川作曲賞の詳細はこちら。
http://www.suntory.co.jp/news/2007/9903.html
本選にエントリーされたのは下記の三曲。実際の演奏の順番は知らない。放送の順番。
◆土井智恵子 作曲 <波跡>
初演:2006年1月21日 山形テルサホール
山形交響楽団第170回定期演奏会◆山根明季子 作曲 <水玉コレクション〜ピアノと管弦楽のための>
初演:2006年10月19日 東京オペラシティコンサートホール
第75回日本音楽コンクール作曲部門本選会
演奏は全て小松一彦指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団。山根さんの作品にはピアノに稲垣聡さんが加わっていた。
土井さんの作品は、つかみは「おっ」と思わせるが、その後の展開に何となく月並みな印象を持った。ザワザワーと始まって盛り上がってドカーンとなって、間があっておもむろに別の主題が、みたいな作りの作品は日本人作曲家に少なくないと思うから。けれど、そういう現代音楽の予定調和的なスタイルとしては、完成度の高い響きを持っていたと思う。
山根さんの作品では、上記の通りピアノが登場する。思い切り良く選んだと思う最初の音、直線的な動きが交錯するような箇所などでは耳を奪われた。タイトルの取っ付き易さとは裏腹に、とても厳しい表情を湛えた音楽だったように思う。この作品には室内管弦楽版があるらしい。楽譜を拝見してみたい。
最後に放送されたのは小出さん。何と所属している団体のはてなダイアリーがあった(http://d.hatena.ne.jp/cafe-amekaze/)。結果的にはこの作品が芥川作曲賞を受賞したのだが、僕は心から納得した。未聴感と懐かしさが絶妙のタイミングで並べられていく。冒頭などは、俄かにはオーケストラから出ているとは思えないほどの独特の響きがしていた。オーボエと思われる雑踏の向こうのクラクションのような音にもハッとさせられたし、何だろう何だろうと思っているうちに終止。作品がとても短く感じた。と思ったら、それほど長くなかった(約6分)。ラジオでは西村朗さんが「もう一度聴いてみたい」とおっしゃっていたが、僕も同じ思いを持った。
それぞれがそれぞれのパレットで、遊んだり構築したり沈んだり、と、個性を発揮された作品で楽しかった。そしてやっぱり小出さんの独特の音響には驚かされたし、サントリー音楽財団から委嘱されることとなった新作の完成を楽しみに思う。
現代の音楽が、僕は好きだなあ。