ホルスト「吹奏楽のための第1組曲」の各録音の演奏時間を書いてみたりする
手元にある分の演奏時間を調べてみた。
演奏者 | 録音年 | 第1楽章 | 第2楽章 | 第3楽章 |
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フレデリック・フェネル/イーストマンW.E. | 1959年 | 4:23 | 2:36 | 2:36 |
フレデリック・フェネル/クリーヴランド管 | 1978年 | 4:36 | 2:47 | 2:47 |
エリック・バンクス/RAF | 1984年 | 3:57 | 2:50 | 3:04 |
進藤潤/自衛隊音楽隊 | 1987年 | 4:50 | 2:53 | 2:53 |
ドナルド・ハンスバーガー/イーストマンW.E. | 1990年 | 4:05 | 2:39 | 2:39 |
フレデリック・フェネル/アメリカ海兵隊 | 1997年 | 4:46 | 2:46 | 2:46 |
佐渡裕/シエナW.O. | 2005年 | 5:14 | 2:56 | 2:50 |
アメリカ海兵隊の録音の指揮はフェネルだった模様。3つの録音を比べると、第1楽章では遅いテンポを採るようになっていったようだ。これだとよくある変化ですね。けど第2楽章はほぼ同じ速さを保っているので、第1楽章の変化には意図がありそうではある。またイーストマン、クリーヴランド、アメリカ海兵隊、と、それぞれが楽譜の面ではバラバラなことをやっているので、フェネル自身にはこの曲の本来の姿への関心は無かったのではないかと勘繰っているところ。イーストマンだと第2楽章のコルネット・ソロに譜割りのミスがある。クリーヴランドはクラッシュ・シンバルのカット、第2楽章のユーフォニアム(バリトン?)・ソロの音間違い。アメリカ海兵隊だと、第2楽章のコルネット・ソロにユーフォニアムを重ねてあり、第3楽章100小節目からの2度・5度の動機の提示がオクターブ上げられている。うーん、フェネル不思議。これは東京佼成との録音も買わないといけないな。3つの録音の明確な共通点としては、バス・ドラムの叩かせ方。輪郭のある音で胸がすく。
第1楽章で一番遅いのがシエナ。ロイヤル・エア・フォース(RAF)と比べると、1分以上差がある。音色の磨かれた感じがより強いのもシエナなので納得だが、ツルツルした響きで取っ掛かりがないのが、僕には受け入れられない。どうもスッキリしない印象が残る。それに楽譜での指定は「Allegro Moderato」なのだよね・・・。速いのはRAFで、続いてはハンスバーガー/イーストマン。素っ気無さがシャコンヌとしての厳格性や継続性を感じさせてくれている気はする。黙々と変奏を続けていくところなんて、求道的な雰囲気がないでもない。ただ殺伐とした響きに過ぎるのもこの2者の共通点。大編成で技術的に申し分のない演奏者にこのテンポで録音して欲しいな。
第2楽章で一番遅いのもシエナ。このテンポのせいだけではないと思うけど、4/4拍子から2/4拍子に戻る瞬間の変化にハッとさせてもらえないのが残念。それにこの演奏の表情は「Vivace」の指定から遠いと思うのだ。遅くとも快活な雰囲気が出てくればいいのだけど、のんびりさが勝っている。自衛隊音楽隊も改めて聴くと、シエナに対してのと同じ感想を持ってしまった。速いのはフェネル/イーストマン。この元気良さは素敵。間違いなく「Vivace」。ハンスバーガー/イーストマンも爽やか。
第3楽章で一番遅いのはRAF。トリオの「con largezza」の意味が掴み切れないのだけど、「largo」と関係あるのだろうか。あと、イギリスの作曲家が生み出した数々の行進曲を思えば、極端に速いテンポではなく、RAFのこのテンポが適当なのかも知れない。ただ、RAFでは金管のアタックばかりが耳についてしまい痛々しい。トリオ旋律開始後の優雅さ高貴さは他では聴けないものだけど、オーボエが入ってくると途端に怪しくなる。えーと、第3楽章についても、大編成で、技術的に申し分のない演奏者にこのテンポで録音して欲しいなと。ところで、最後の「Piu mosso」で極端に速くするのはダサいと思います。